エゴツルクビオトシブミがエゴノキの葉に落とし文を作る様を紹介します。
また、ブドウハマキチョッキリがエビヅルに同様の落とし文を作っています。
満開のエゴノキの花 (2017.5.14) 5月の中旬、上水路のいたるところでエゴノキの花が咲き、満開の樹下を歩くと芳香が感じられます。また、足元には落花が白く一面に広がっています。見上げるとオレンジ色の雄しべが目立つかわいらしい花がぶら下がっています。
エゴノキの葉で作られた落し文 (2017.5.14)
花にまぎれてなかなか気づきませんが、妙に折りたたまれた葉がぶら下がっています。「落し文」とは、その昔直接言いにくいことを書いた文書をわざと落として気づかせる文(手紙)に形が似ているからとのことです。
虫たちが中に卵を産むために巻いた葉のことを「揺籃(ようらん)=ゆりかご」といいます。
エゴツルクビオトシブミ (2016.5.23)
落とし文を作った虫です。大きさは6~9mmです。上の首の長いのはオス(約9mm)、下に首が短く小型のがメス(約7mm)です。葉に開けられた穴は食べた痕です。細い首の先に口器があります。大きさは1mm以下でしょう。
交尾 (2017.5.20 10:38)
交尾中のペアを見つけました。葉をしっかり掴んでいるのがメスです。下の首の長いのがオスです。葉の先端が少し巻かれた部分に産卵したようです
ここから写真を撮り始めました。午前10時38分です。
黙々と作業するメス、近くのオス (10:52)
撮影を始めてから14分後
葉を巻くのは雌 (10:49)
交尾後、すぐにメスは葉を巻き始めます。
オスは傍観者? あるいは他のオスが近寄るのを見張っている?
撮影を始めてから11分後
一生懸命に巻く雌 (5.20 11:02)
葉を巻くのは意外に速い。葉の広い部分を巻く作業。
前の写真から10分後。
作業の山は越えたようです。
(5.20 11:09)
前の写真から7分後。
でき上がり
一息ついている感じです。午前11時13分
撮りはじめてからからここまで35分間、小さな体、小さな口器を使ってのたいへんな作業でした。
今回の観察は交尾中からでしたが、メスが葉先を巻き始めてから、オスとの出会い、交尾を経て落し文の完成まで73分という報告もあります。
最後の仕上げ (5.20 11:11)
前の写真から2分後。
葉を開く
交尾後、いつどこに産卵したのかが不明だったので、謝りつつ落し文を開いて見ました。
あの小さな虫が、葉の一部を切りつつ精緻に巻いていることに驚きました。
卵は1個
交尾のとき、葉の先端を少し巻いた位置に卵が1個ありました。大きさ1mm未満、ゆで卵のようにきれいでした。
落し文(揺籃は)この卵、孵化した幼虫を守り育てるために必要な「ゆりかご」作りに一生懸命だったのです。
エビヅルにブドウハマキチョッキリが落とし文を作りました
エビヅルの若芽 (2017.6.1)
落葉するツル性の木、ブドウの仲間です。葡萄を古名でエビといったそうです。葉の裏には淡褐色の毛が密生して白っぽく見えます。赤みを帯びた若芽がたれているのも海老を思わせます。 ヤマブドウに似た果実は食べられます。
ブドウハマキチョッキリ (2017.5.19)
若い葉の先端に5mmほどの小さな虫がとまっていました。でこぼことして光沢はありませんが、光の加減できれいに見えることがあります。
交尾中のペア+1匹のオス (2017.5.16)
1匹のメスを求めて3~4匹のオスが奪い合いをすることがあります。
オスが3匹 (2017.5.16)
メスに振られた3匹が残念会をやっているように見えました。葉についたまだら模様はブドウハマキチョッキリの食痕です。
揺籃を作るメス (2014.5.29)
揺籃作りの作業はやはりメスでした。葉裏を外側にした葉巻型をしています。メスが葉巻の形をした
エゴツルクビオトシブミが作る揺籃と比べると、葉が大きく厚いエビヅルで作るほうが重労働かもしれません。
揺籃の中に卵は1個 (2014.5.29)
揺籃を謝りつつ開いてみました。黄色の卵が一個、葉を巻き始めた端のほうの密生した毛に上にありました。ここで孵化した幼虫は土の中に入り、8月下旬頃に羽化した後、成虫で越冬するそうです。
複数個の産卵や揺籃は葉表を外側にするとの報告もあります。