第9回 小金井市にも「ほっこぬき」?!

みず道探訪  ~水と緑のつながりを求めて~

写真と文は加藤嘉六さん 転載歓迎いたします

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市民が選ぶ「玉川上水・分水網の関連遺構100選」で、砂川(深大寺)用水を小金井市域中心に、小金井分水、梶野新田分水、深大寺用水を探訪しました。

 

砂川分水の歴史は●明暦3年(1657)砂川村分水の開削 ●享保年間(1716~1735)の新田開発 ●明治3年(1870)の分水口統合と、翌年(明治4年)の深大寺用水開削に大まかに分けることができます。また、平成11年(1999)の地方分権により、水路は国から流域各市へ移譲されました。


01.小金井市貫井北町(茜屋橋の南)を通る砂川(深大寺)用水に写真のように緑で覆われた不思議な場所があります。ここが小金井市に入って最初の「ほっこぬき(胎内堀)」です。昭和39年にこの地に越してきた女性によれば、昔は洗い場として使用していたと聞いている。また、現在この土地はだれの物でもないのだそうです。(2018.8.11、2019.8.5再撮影)

02.ではなぜそうなったのか?昭和12年発行の地図を見ると、茜屋橋を通る新小金井街道を西から渡るとすぐに雁行し南下している。この状態の水路が現在も法務局の公図に表記されています。しかし現実の砂川(深大寺)用水は玉川上水と平行に、小平側と同じようにまっすぐに東流しています。要するに現実の水路と登記されている水路の位置と形状が違っているのです。永年放置されてきたことにより、歪な現実を生んでしまったことになります。今回の「100選候補」の審査委員会では文化財としての「ほっこぬき」を高く評価していました。このことを市の担当者に伝えましたが、古文書がない。という事でこのままの状態が続くことになります。このことを伝えたくて、このブログを書きました。


03.その後再度調査をし、ここから100m位下流の農家の庭先でもしや?と言うフェンスを見つけました。(2018.10.18)

04.その中にしっかりと「ほっこぬき(胎内堀)」を確認できました。(2018.10.18)


05.ではなぜ「ほっこぬき」は掘られたか?それは茜屋橋の上流(小平市)100m位のところに「高木水車」が造られたからです。

高杉水車イラスト 高杉昭夫さん(昭和3年生)の話と、小坂克信著「玉川上水系の用水の地域に果した役割に関する調査」からイラストを起こしました。

06.小金井分水 分水門 小金井分水は、明治3年に砂川(深大寺)用水に取水口が付け変えられました。写真、右上部の樹木が江戸時代の小金井分水樋口があった玉川上水。(2017.5.4)


07.小金井市教育委員会製作の現地説明版です。江戸時代(開削元禄年間)の小金井分水樋口(玉川上水)の位置が一目瞭然。

08. 続けて小金井分水にある「山王窪の築樋」。築樋は低い土地に土を盛って、突き固めて土手を築き、その上を用水路とした土木工法です。この築樋は元禄9年(1696)頃、玉川上水から小金井村方面に分水を引くため、山王窪と呼ばれる仙川の窪地に築いたものです。全長56間(約102m)高さ一丈八尺(約5.4m)あったと記録されています。かつて水路だった上部は歩道となっています。(2018.8.9)


09. 仙川の水を流すため、樋の下にトンネルがあります。

10. 現在空堀になっている砂川(深大寺)用水。前方に「島崎水車」があったようです。(2018.8.9)


11. 昭和12年発行 「小金井町全図」の部分拡大。三角形「く」の字の部分が「廻し掘り」と呼ばれた水吐用の補助水路。

12. 「小金井村地利水図」に深大寺用水を加筆。


13. 梶野分水築樋 梶野新田の開発に当たり、玉川上水から水を分けてもらえるよう、幕府に働きかけ、享保17年(1732)に梶野分水が許可されました。仙川と立体交差するこの地に、築樋(長さ約230m、高さ約4m)が造られました。明治3年(1870)に取水口の付け替えが行われ、上流の砂川用水と繫がり、下流は深大寺村(現調布市)まで延伸し、深大寺用水とも呼ばれました。(2018.8.11)

14. 築樋のトンネルを潜った仙川(下流側)。前方高く盛り上がっているのが「築樋」。(2018.8.11)


15. 深大寺用水西堀 水路跡 深大寺用水は明治4年に開削された田用水です。深大寺村名主富澤松之助が中心となって、当時野崎村(三鷹市野崎)まで引水されていた梶野新田分水の利用を品川県に請願し、許可されました。深大寺用水には東堀と西堀がありますが、現在梶野新田用水から下流は全て暗渠で、末流は調布市の野川に流れ落ちていました。

 

写真は名主富澤家の屋敷の中です。地上に残る最後の痕跡で、ここを深大寺用水が流れていました。(2018.8.18)

 

(参考資料/小坂克信著「玉川上水と分水」、江向直美著「三鷹周辺 玉川上水の分水」、玉川上水再々発見の会「玉川上水ワンポイントガイド」)