みず道探訪

~水と緑のつながりを求めて~

第3回 田村分水と湧水ー福生市大字福生

写真と文は加藤嘉六さん

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         ※※※ 湧水編 ※※※

以前この地を訪ねた時、清岩院と農家の間に小川が流れていて、湧水だと教えられました。玉川上水の水ではないと言われ残念に思った経緯があります。今回の探訪はその湧水を見極めることが、もう一つの目的でもありました。

そこで分かったことは、福生市の約90パーセントを占める河岸段丘(崖線)地形は古多摩川が運んで来たレキの堆積と侵食の繰り返しによるもので、湧水は段丘の下部からであり、段丘(崖線)面のあちこちで見ることが出来ました。


-1 福生湧水調査 調査箇所 湧水調査報告書/福生市生活環境部刊より抜粋

図-2 断面図 湧水調査報告書/福生市生活環境部刊より抜粋


シャングリラ!思わず心の中で叫んでしまった。奥の一段高いところ(段丘上)を玉川上水が流れています。その下に図-1地点1があり、かつては湧水を利用した田んぼだったそうです。2004撮影

湧水地点1。きれいに澄んだ水です。わさびやクレソンの姿も見えます。玉川上水の段丘下からの湧水ですから当然漏水を考えますが、(湧水調査報告書、8地点で行った通年調査によれば、水温は10℃~20℃の範囲に収まり、池や排水口から採水したものも湧水起源であることは間違いないと考えられます。)とあります。2014.10撮影


宿橋のたもとにある廃墟となった笹本旅館(宿橋の名はここから来ている。前身は笹本製糸場)。庭に湧水があり、湧水地点1より上流。2014.10

 木村家(農家)の入り口、奥に清岩院が見える。2014.10


湧水を利用した木村家の洗い場。2014.9

農家ごとに蔵があり、伝統的な和の集落風景が懐かしい。2004

古刹清岩院の池は湧水です。2014.9

湧水を庭に引き込んだ池、かつては魚がたくさんいて、ウナギもとれたそうです。2014.10


蔵の前を湧水が流れている。2014.9

小川のような湧水。2014.9


井上家の蔵、明治中頃。江戸時代から続く左官の棟梁、4代目窪田幸七によって建築。繭、絹糸の保管に使用した。2014.9

湧水の小川に残る洗い場、石組みがやさしく美しい。2014.10


湧水は枝分かれしながら近隣の農家を巡りますが、現在は間もなく下水へと導かれてしまいます。充分に活かされていないことがとても残念に思いました。今回と次回は「玉川上水遊歩道を考える会」の協力を得ながら進めています。